#13767
Rafal Milach

#13767<br>Rafal Milach

#13767
Rafal Milach

2026 - 04 - 30

Edit:
Sohei Oshiro
Thanks:
Kiyotaka Hamamura

2026 - 04 - 30

#13767<br>Rafal Milach

ラファウ・ミラハという写真家がいる。ポーランド出身で、国際的な写真家集団「マグナム・フォト」に所属し、世界中の独裁政治や理不尽な暴力に対して、カメラを武器に戦っている。ただ、彼が他のフォト・ジャーナリストたちと大きく異なるのは、その最終的な表現方法にある。彼はストレートなアプローチではなく、アブストラクトなイメージや、加工、コラージュを用い、世界の歪みをアイロニックに提示する。大いなる権力を揶揄した『PRESSIDENT』では、ボタンを押す瞬間の手のアップを連続して配置し、1950年代のポーランドにおける共産主義政権への批判を込めた『The First March of Gentlemen』では、当時のエリートたちのスナップをコラージュし、2017年にワルシャワで起こった大規模な市民抗議活動のルポタージュである『Nearly Every Rose on the Barriers in Front of the Parliament』では、非暴力の象徴である白薔薇を薄汚れた壁の前でひたすら切り取っていた。いずれのプロジェクトも、ストレートなドキュメンタリー・フォトと多少比べるとわかりづらいかもしれないが、そこには確かに国や権力者による“暴力”の行使に対しての、ラファウの抑圧的で力強い批判の声が込められている。

今回、弊誌で“暴力”を特集するにあたり、彼へコンタクトを取ってみたところ、「まだどこにも発表していないが、今進めているプロジェクトがまさしくそれだ」という答えと共に、このイメージが送られてきた。タイトルは「#13767」。これは2017年にドナルド・トランプが発した大統領令のコードナンバーを指し、内容は「国境の警備と移民施行の改善」というもの。つまりはメキシコからの移民を抑制するための「万里の長城」を建設するという、あの馬鹿げた計画のことだ。ただ、当初はトランプの勢い余った暴言に過ぎないと思われたこの計画も、日に日に現実味を帯びてきている。実際に2018年には、米国税関国境保護局が国境の壁のモックアップ(実物大の模型)とプロトタイプテストに関する最終レポートを公開し、それに関するさまざまな違反およびスケーリングテストを提示していた。今年に入ってからは、ついにメキシコ国境での難民申請をほぼ不可能としている。このトランプ政権の権力の行使に対し、ラファウは批判の声をあげるべく、カメラを手に取った。彼はアメリカとメキシコの国境を巡り、建設中の壁や施設、そしてその国境沿いで生活する人たちのポートレイトを撮影。それらの写真と抽象的なイメージ(鳥かごやコラージュによる鉄具など)を組み合わせることによって、今までに見たことのないヴィジュアルとして、トランプ政権批判(あるいは行き過ぎた権力への批判)をかたちにした。時にストレートなドキュメンタリー・フォトよりも、コンセプチャルなアプローチの方が人の心を震わすことがある。ラファウ・ミラハは間違いなくそれを実践している写真家であり、今後も世界の歪みを提示し、巨大な権力に抗う写真家として不可欠な存在である。この彼の「#13767」の発表を機に、少しでも世界から“暴力”がなくなるのを願うばかりだ。

VOSTOK   2(2019年10月8日発売)より転載
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